よく晴れわたった、ある暖かい日のことだった。一人の青年が、街道を歩いていた。石ころが転がり、雑草が生え、ほとんど使われていない農道か獣道かといった程度のものではあったが。照りつける陽射しに、青年は襟許をぱたぱたと振って風を入れた。
「さすがにあち〜な。ま、雨が降らないだけマシか。今夜はどうやったって、野宿がせいぜいだしなあ。」
青年の青い瞳が見つめたのは、道の脇に立っていた石塔だった。長年、風雨にさらされ磨耗してはいるが、次の街までの距離が数字で示されている。
「これで少し、風でも吹いてくれたら。もちっと涼しくなる……………。」
ふいに、ぼんやりと呟いた彼の言葉が立ち消えた。
「なんだ………?ありゃ……………?」
その視線が、ある一点に注がれていた。太陽の少し左側。ちょうど、大きな雲の塊がぽっかりとひとつ浮いている、その辺り。
「鳥……………?いや……………!違う!」
手を目の上にかざしていた青年は、ぱっと駆け出した。腰に、ぱたぱたと防具が当たっている。長いストライドで、あっという間に、ひとつ先の丘の上へと辿り着いた。
両手を広げて、さしのべる。
ふわっ………
始め、それは風に吹かれてふわりと舞っている、鳥の羽根にも見えた。重量があるとは思えない速度で、ふわふわと落ちてきたからだ。が、徐々にはっきりしてくると、青年は驚きに目を見開いた。
「…………人間………だ………?」
白い布に包まれた、人の身体のようだ。突然、糸が切れたように落ちてくる。
「うぉっとぉっ!?」
青年が慌てて受け止める。
どさっ!
「なっ……」
青年は目をしばたいた。腕の中に落ちてきたのは、やはり鳥の羽根などではなく、重さのある生き物だった。
栗色の髪が、透き通るような肌をした顔にかかっている。まだあどけなさを残すほっそりとした少女。気を失っているのか、目を閉じている。
白い柔らかな生地の服に、赤い石がついたペンダントを下げていた。