「通り雨すぎたら」
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 「いや〜〜〜〜〜。しっかし、いい天気よねえ♪」
 「・・・・・」
 「雲ひとつないってのはこのことよね♪」
 「・・・・・」
 「ついお昼寝なんかもしたくなるわね♪」
 「・・・・・」
 「そろそろお腹もなんとなく空いてきたかなあ♪」
 「・・・・・」
 「次の街まであと少しよね。それまで我慢できるかなあ・・・。」
 「・・・・・」

 もう。なんなのよ、一体。
 朝からこうなのだ。ガウリイが、何故か不機嫌そ〜なのだ。

 まったく旅の連れとして、これほど鬱陶しいものはない。ただ黙りこくってついてくるだけなんて。さっきからあたしは一人で喋ってるみたいだ。
 でもなんで、ガウリイってばいつもと違うわけ?
 今まで一緒に旅してきて、こんな風なガウリイってのは見たことなかった。勿論、怒ったところは見たことがある・・・ような気がする。でもこんなに、その怒りが長続きしたことはない。
 別にど〜でもいいんだけど。なんとなく、気になるじゃないかあ。

 「ねえ、ガウリイ」
 「・・・・・」
 「その剣、試し切りしてみた?使い物になるかどうか、試しておいた方がいいんじゃないの?」
 実はつい昨日、ガウリイは新しい魔法剣を手にいれた。だがそれが果たして光の剣の代わりになるものかどうかは、自信がまったくこれっぽっちもない。
 でも実際、戦闘なんかがあるとガウリイの剣が使えるかどうかで戦局は全く違ってくる。ガウリイにとっても剣は重要な問題だと思うが。あたしにとっても重要な問題なのだ。
 でもホントに、ガウリイってば真剣に考えてるのかな?どうもこの男は何考えてるかわかんないとこあるからなあ。何考えてるか、というより、何も考えてないんじゃないかと思うくらい。
 ところが、今日のガウリイはこれだ。
 う〜〜〜〜ん。わかんない。

 あたしは立ち止まり、くるりと振り向いた。
 うつむき加減で歩いていたガウリイの足も、ぴたりと止まる。

 いいお天気。だと思ったら、なんとなく風が冷たい。そう言えば、日射しも弱まった気がする。
 なんとなしに、雨の匂いがする。こりゃ一雨来るかな。
 いや、そーでなくて。

 「ね。ガウリイ。」
 「・・・・・」
 「ガウリイ。」
 「・・・・・」
 「ちょっっと!!!名前呼ばれたら返事くらいしなさいよねっっっ!!!」
 いかん、段々イライラしてきたあっ。あたしってば、ハッキリしないのが一番嫌かもっ。
 「ガウリイ!」
 「・・・何だ。」
 あれ。ガウリイの声って・・・こんなに低かったっけ?
 「さっきから一体なんなのよ?人が話しかけても知らんぷりで。」
 「・・・」
 「あ〜〜それよっ!そうやって黙っちゃう。何怒ってんのか知らないけど、いい加減、機嫌直してさっさと歩いてちょーだい!一緒に歩いててすっごくうっと〜し〜のよ!」
 「・・・オレが、怒ってる?」
 あれ?
 「だってあんたってば、今朝からずっと不機嫌だったじゃない。なによ、それとも怒ってるとかじゃなくて、そうだ・・・・」
 なるほろ。
 「わかった!虫歯が痛いとか!」
 ぎゃははははははは。
 と、あたしは笑った。
 一人で。
 「・・・・・。」
 「・・・・・」
 その後の沈黙と言ったら。


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