ぴちぴちちゅくちゅく。
小鳥さんも上空で歌う、穏やかな春の風が吹く街角。なんともこう、すがすがしい朝である。やっぱり一日の始まりは、こうでなくっちゃね(はぁと)
気持ちよく目覚めたあたしは、洗面所で顔を洗う。後からアメリアが追い付いてきた。
「あ、リナさん。昨日、上着のほつれてるって言ってたとこ。直しておきましたよ?」
「えっ、ホント?アメリア、さんきゅ〜っ♪」
「いえ、自分のついでですから。それと、ちょうど留め金が取れかけてるのがありました。」
「あちゃ〜。どの辺?」
「いえ、それもついでで直しておきました。」
「アメリア〜♪だから好きよ〜っ♪」
おかっぱ頭をかいぐりかいぐりするあたし。
素直に親愛の情を示しただけなのだが、アメリアは露骨に嫌そうな顔をする。
「おだててもダメですよ。次は自分でやって下さいねっ。」
「ぶう。わかってるわよ〜〜〜。」
ちっ。この手には乗ってくんないか。
「何だお前達、まだこんなところにいたのか。ガウリイのダンナは、もう食堂で待ってるぜ。」
「あらゼル、早いわねあんた。」
次にやってきたのは、マントはつけていないものの、すっかり着替えているゼルガディスだった。まだパジャマだったアメリアが、何故かこそこそとあたしの後に隠れようとする。
「まあな。今朝は暗いうちから目が覚めちまって。しょうがないから、剣の研ぎ直しなんぞやってきた。」
そう言って、ゼルは腰のブロードソードを示した。
「ああ、あんたの剣、少し刃毀れしてるって言ってたわよね。・・・・しっかし、あんたもマメよね〜〜〜っ。」
「いざという時に役に立たんと困るからな。」
ぴきん♪
あたしの鼻に何かが匂う。何かお得な気配がすりゅ。
「ものは相談なんだけど、ゼル。あたしの細剣もちこっと研いでくんないっかな〜〜〜〜。そんかわし、こないだ手に入れた希少薬草、安く分けてアゲルから♪」
おまけにウィンクもつけちゃう。ゼルは大仰にため息をついてみせる。
「お礼にタダにする気はないんだな・・・・。まあ、リナらしいと言うか。いいさ、どうせ今日は他にすることもないしな。」
「ホントっ!やたっ!!らあっきい♪ゼルちゃんアイシテル〜〜〜〜♪♪♪」
「ぶっ、ごほっ、ごほっ」
アメリアと同じくちょっと親愛の情を込めただけなのだが、何故かこの岩男は激しく咳きこむ。あたしの後では、アメリアが思いっきりたじろいでいた。
「リ・リナさん・・本当はゼルガディスさんが好きだったんですか?」
・・・は???
「な、何言ってんのよ、アメリア?さっきあんたにも言ったでしょっ?あたし、嬉しいとつい出ちゃうのよね。好きとかアイシテルとか。」
あたしが手をぱたぱたと振ると、アメリアの顔がぱっと明るくなった。
「なあんだ、そうだったんですか。じゃあはりきって、朝ご飯を食べに行きましょ〜〜〜〜っ♪」
何をほっとしてんだろ〜か。このムスメは。
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